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2023.10.02.Mon
最新の長寿情報

2023年9月の最新新着情報  NMN機能性食品開発協会 橋本圭司

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https://www.arnan.or.jp/

2023年9月の最新新着情報  NMN機能性食品開発協会 橋本圭司

9月では以下の最新情報をご紹介します。

集英社新書にて米井嘉一先生著「若返りホルモン」という本にて、1ページ程度でしたがNMNが紹介されていました。DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)というホルモンを取り上げた著書になります。

DHEAとは、副腎や性腺で合成されるステロイドホルモンの一種で、男性ホルモンや女性ホルモンの原料になります。DHEAは、抗酸化作用や免疫力の維持、性機能の改善など、さまざまな効果があると言われています。DHEAは、加齢とともに減少するため、若返りやアンチエイジングに興味がある人に注目されています。

この著書ではNMNがDHEAを増やすサプリメントとして紹介されていました。その理由としては、以前にご紹介した同志社で行われた臨床研究においてNMN摂取がDHEAが増加しており、その理由の仮説として、DHEA産生細胞のNAD+が増えて細胞機能が活性化したこと、糖化ストレスの軽減によりDHEA産生細胞内の老廃物が減ったことが挙げられていました。

米国でのNMNの取り扱いに関しては、既報の通り2023年3月、Natural Products Association(NPA)とAlliance for Natural Health USAは食品医薬品局(FDA)に要望書を提出した後は進展がありません。

FDAはNMNを医薬品として研究されていることを理由にサプリメントとしての販売を禁止する通知を出す前に、NMNを新規栄養成分(NDI)、すなわち栄養補助食品の添加物として認めていました。そのNDIについて、FDAは後に、NMNとMIB-626(メトロ・インターナショナル・バイオテック社が新薬として調査中のNMNの独自製剤)との関連はすぐには分からなかったと述べていますが、その対応に対して批判がされています。

 FDAによるNMNのサプリメントとしての定義からの除外決定は、2022年に米国で推定2億8,020万ドルと評価されるNMN市場に甚大な悪影響を及ぼし始めているとの指摘もあります。

FDAは最近の書簡で、栄養補助食品に含まれるNMNに関する市民請願について、実質的な決定に至っていない理由を "競合する省庁の優先事項 "を挙げており、上記要望書や下院議会での質問状に対して明確な回答を引き延ばしていますが、状況次第ではNPAやAlliance for Natural Health USAによる訴訟が準備されているとの情報もあります(参考1)。

指先から採取されるわずかな血液で血中のNAD+を高精度で測定できる手法が開発されました。それを元にNMN30日間毎日500㎎経口投与した結果を測定すると血中NAD+がほぼ2倍になり、NMN1,000mg投与すると血中NAD+がさらに30%増加することが示されました。

②NMNを添加した温度感受性ハイドロゲルが糖尿病の皮膚創傷において細胞増殖や血管新生を通して治癒を促すことが示唆されました。

高血圧患者に1日800mgのNMNを6週間経口摂取させると、血圧が有意に低下するという研究が報告されました。

以下それぞれの研究の詳細です。

1.本研究では、NAD+の血液中における濃度が加齢や性別によってどのように変化するかを調べるために、5 μLの毛細血管血を使ってNAD+を迅速に測定できる自動化されたNAD+分析装置を開発したと報告しています。

人間のNAD+の状態は個人差が大きく、低侵襲で低コストな測定法がないため、全血中のNAD+の基準値を確立したり、従来のNAD+サプリメントに対する反応が悪い人に対する個別化された治療法を開発したりすることが困難でした。

著者らは、再結合型発光センサータンパク質と自動光学リーダーを用いて、毛細血管血からNAD+を測定することができる分析装置を開発しました。この装置の最小検出限界は0.5 μMであり、従来の高速液体クロマトグラフィーや質量分析法と同等の精度でNAD+を測定できることを実証しました。

この装置を用いて、有酸素運動やNMNサプリメント(500mg、1000mg)摂取が全血中のNAD+を増加させることを示しました。また、50歳未満では男性の方が女性よりも平均的に高いNAD+を持っていることや、NAD+レベルの変動を調査した結果では100日間以上安定しており、NMNの継続的な経口投与と運動によってNAD+レベルを高めることができることが立証されました。

表題:Fingerstick blood assay maps real-world NAD+ disparity across gender and age

<地域>中国科学院深圳先端技術研究所

<対象>人間

<引用>Wang P, Chen M, Hou Y, Luan J, Liu R, Chen L, Hu M, Yu Q. Fingerstick blood assay maps real-world NAD+ disparity across gender and age. Aging Cell. 2023 Aug 28:e13965. doi: 10.1111/acel.13965. Epub ahead of print. PMID: 37641521.

<URL>https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/acel.13965

<注目ポイント>

NMNやNAD+ブースターの研究において、体内・血中のNAD+の測定は必要不可欠です。高精度かつ簡便な本研究の手法が普及すると、よりNMN等の研究のハードルが下がり、様々なデータも集まるため非常に興味深い研究となっています。

2.糖尿病における合併症の足潰瘍は、死亡率も高く、現行の治療法では重大な副作用や高額な費用、満足のいくような結果が得られないなど様々な課題があり、糖尿病性足潰瘍の治癒を安全かつ効果的に促進できる治療法の開発が急務となっています。

従来、ドレッシング材は主に創傷を感染から守るための物理的バリアを確立するために使用されてきましたが、これらのドレッシング材には機能的な有効性が欠けていました。

しかし近年創傷治癒を促進するため、抗菌性や組織再生特性を持つ化合物を組み込んだ機能性ドレッシング材が開発され、その有効性が高まっています。本研究ではNMNを添加した温度感受性ハイドロゲルを開発し、その効果を調べました。

 その結果、細胞増殖、遊走、血管新生を促進したことを確認し、実際に糖尿病モデルマウスの皮膚創傷モデルにおいて、in-vivoでの有効性が証明されました。

 NMNを添加した温度感受性ハイドロゲルは、簡便で経済的、効果的かつ安全な方法で糖尿病創傷の治癒を促進することができ、糖尿病創傷の治療に応用できる可能性が示されました。

表題:Temperature-sensitive hydrogel dressing loaded with nicotinamide mononucleotide accelerating wound healing in diabetic mice

<実施場所>中国上海市復旦大学生命科学院遺伝学研究所

<対象>in vitro、糖尿病モデルマウス

<引用>Yue Liang, Min Li, Yuan Tang, Jinlong Yang, Jing Wang, Yuqi Zhu, Huitong Liang, Qinru Lin, Yipen Cheng, Xinyi Yang, Huanzhang Zhu,Biomedicine & Pharmacotherapy,

Volume 167,2023,115431,ISSN 0753-3322,

https://doi.org/10.1016/j.biopha.2023.115431.

<URL>https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0753332223012295

3.高血圧は、脳卒中、虚血性心疾患、腎疾患による850万人の死亡の原因となっており、公衆衛生上の大きな問題です。高血圧は一種の老化関連疾患として認められており、これまでのNMN摂取による老化の防止効果を鑑みると、治療法の一つとしての可能性が考えられます。

本研究では、高血圧でNAD+のレベルがどのように低下するかを知るために、大動脈の内皮細胞で、NAD+を消費する酵素CD38のレベルを測定しました。CD38 はNAD+やNMNを分解する働きが知られています。

その結果、高血圧でない健康な成人と比較して、高血圧患者ではCD38レベルが2倍以上高いことを発見しました。これらの結果は、高血圧患者の内皮細胞におけるCD38レベルの上昇が、NAD+レベルの低下に寄与していることを示唆すると本研究では考えました。

そして、高血圧患者にNMNを毎日800㎎摂取して調査したところ、血圧が有意に低下し、血球NAD+濃度が43%上昇することを確認しました。

表題:NAD+ exhaustion by CD38 upregulation contributes to blood pressure elevation and vascular damage in hypertension

<実施場所>孫文大学第一附属病院、中国

<対象>健康な被験者52人と新たに高血圧と診断された患者50人を含む102人、in vivo、in vitro

<引用>Qiu Y, Xu S, Chen X, Wu X, Zhou Z, Zhang J, Tu Q, Dong B, Liu Z, He J, Zhang X, Liu S, Su C, Huang H, Xia W, Tao J. NAD+ exhaustion by CD38 upregulation contributes to blood pressure elevation and vascular damage in hypertension. Signal Transduct Target Ther. 2023 Sep 18;8(1):353. doi: 10.1038/s41392-023-01577-3. PMID: 37718359; PMCID: PMC10505611.

<URL>https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10505611/

――以下、研究、トピックの詳細(翻訳)――

<研究>

1.Fingerstick blood assay maps real-world NAD+ disparity across gender and age

要約

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)レベルは、様々な加齢関連疾患と関連しており、その薬理学的調節は加齢介入への潜在的アプローチとして浮上している。しかし、ヒトのNAD+動態は大きな不均一性を示している。迅速で低コストのアッセイがないため、全血NAD+ベースラインの確立や、特に従来のNAD+補充に対する反応が乏しい人々に対する個別化治療の開発が制限されている。ここでわれわれは、組換え生物発光センサータンパク質と自動光学リーダーを用いて、5μLのキャピラリー血液でNAD+を迅速に測定する自動NAD+分析装置を開発した。このアッセイの最小限の侵襲性により、実世界のNAD+動態の頻繁かつ分散的なマッピングが可能となった。我々は、有酸素スポーツとNMN補給が全血NAD+を増加させ、50歳以前は平均して男性の方が女性よりNAD+が高いことを示した。さらに、ヒトのNAD+ベースラインの100日間にわたる長期安定性を明らかにし、実世界のNAD+を調節する主な行動を特定した。

<引用>Wang P, Chen M, Hou Y, Luan J, Liu R, Chen L, Hu M, Yu Q. Fingerstick blood assay maps real-world NAD+ disparity across gender and age. Aging Cell. 2023 Aug 28:e13965. doi: 10.1111/acel.13965. Epub ahead of print. PMID: 37641521.

 

2.Temperature-sensitive hydrogel dressing loaded with nicotinamide mononucleotide accelerating wound healing in diabetic mice

要約

糖尿病性足潰瘍は、糖尿病の一般的な合併症であり、患者のQOLに大きな影響を与え、医療制度に大きな経済的負担を強いている。しかし、現在使用されている治療法には様々な課題があり、従来から使用されているドレッシング材は機能的な有効性を欠いている。糖尿病の創傷治癒には酸化ストレスが重要な役割を果たしていると考えられている。そのため、抗酸化作用で知られるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)は創傷治癒プロセスを促進する可能性がある。ここで、プルロニックF127とプルロニックF68に抗菌成分キトサンを混合して感温性複合ハイドロゲルを合成した。このハイドロゲルは、安定した構造、適切な固液相変化、ゆるやかな空隙率、徐放性、抗菌性、生体適合性などの良好な特性を示した。In vitroの実験では、NMNを担持した温度感受性ハイドロゲルは、細胞増殖、遊走、血管新生を効果的に促進し、抗酸化活性を示した。糖尿病の厚さの皮膚欠損モデルでは、NMNを負荷した温度感受性ハイドロゲル処理は、コラーゲン合成、血管新生を促進し、血管内皮成長因子とトランスフォーミング成長因子β1の発現を増加させることにより、創傷治癒を有意に促進した。まとめると、NMNを添加した温度感受性ハイドロゲルは、簡便で経済的、効果的かつ安全な方法で糖尿病性創傷の治癒を促進することができ、糖尿病性創傷の治療に応用できる可能性がある。

<引用>Yue Liang, Min Li, Yuan Tang, Jinlong Yang, Jing Wang, Yuqi Zhu, Huitong Liang, Qinru Lin, Yipen Cheng, Xinyi Yang, Huanzhang Zhu,Biomedicine & Pharmacotherapy,

Volume 167,2023,115431,ISSN 0753-3322,

https://doi.org/10.1016/j.biopha.2023.115431.

 

3.NAD+ exhaustion by CD38 upregulation contributes to blood pressure elevation and vascular damage in hypertension

要約

高血圧は内皮機能障害と動脈硬化を特徴とし、アテローム性動脈硬化性心血管系疾患の病因の一因となっている。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)は、基本的な生物学的過程に関与するすべての生きた細胞に不可欠な補酵素である。しかし、高血圧患者におけるNAD+レベルの変化と血圧(BP)上昇および血管障害との関連はまだ研究されていない。ここでわれわれは、末梢血単核球(PBMC)と大動脈の両方において、高速液体クロマトグラフィー質量分析法(HPLC-MS)で検出されるNAD+レベルの低下が高血圧患者に認められ、血管機能障害と並行していることを報告した。ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)サプリメントによるNAD+増強療法は、高血圧患者(NCT04903210)およびAngII誘発高血圧マウスにおいて、血圧を低下させ、血管機能障害を改善した。内皮細胞におけるCD38のアップレギュレーションは、NMNのバイオアベイラビリティを低下させることにより、内皮NAD+の枯渇をもたらした。炎症性マクロファージの浸潤と炎症性マクロファージ由来のIL-1β生成の増加は、JAK1-STAT1シグナル伝達経路を活性化することにより、CD38の発現上昇をもたらした。CD38のKO、CD38阻害剤投与、あるいはアデノ随伴ウイルス(AAV)介在による内皮CD38ノックダウンにより、AngII誘発高血圧マウスの血圧が低下し、血管機能障害が改善した。本研究により、内皮CD38の活性化と、それに続くマクロファージ由来IL-1β産生亢進によるNAD+分解の促進が、高血圧における血圧上昇と血管障害の原因であることが初めて示された。NAD+ブースト療法は、高血圧患者の管理のための新しい治療戦略として用いることができる。

<引用>Qiu Y, Xu S, Chen X, Wu X, Zhou Z, Zhang J, Tu Q, Dong B, Liu Z, He J, Zhang X, Liu S, Su C, Huang H, Xia W, Tao J. NAD+ exhaustion by CD38 upregulation contributes to blood pressure elevation and vascular damage in hypertension. Signal Transduct Target Ther. 2023 Sep 18;8(1):353. doi: 10.1038/s41392-023-01577-3. PMID: 37718359; PMCID: PMC10505611.

 

その他参考文献

1.” FDA delays substantive response to NMN petition”,

 https://www.naturalproductsinsider.com/supplement-regulations/fda-delays-substantive-response-to-nmn-petition